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坂本プロデューサーの『ようこそ、横浜マラソンへ』
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坂本プロデューサーの『ようこそ、横浜マラソンへ!』
坂本プロデューサー

いよいよ本番が近付いてきました。大会プロデューサー坂本雄次による連載がはじまりました。
各回のテーマに合わせて、本人の直筆の書と一緒にお送りします。

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Vol.4 坂本流!フルマラソンを極める

昨今、市民マラソン大会というとメイン種目がフルマラソン、というのが当たり前のようになっています。参加する市民ランナーも「マラソンに出る・・・」といったらフルマラソンを走ることが当然のように捉えられています。時代も変わったのか?と思わざるを得ません。

今から30年ほど前だと、フルマラソンへの参加はしっかり練習を積んで、本番数か月前には力を試す意味でハーフマラソンを走って本番に臨む、という方法が定番でした。つまり市民ランナーにとって、フルマラソンは走る距離もさることながら、走る以上はしっかり時間内で完走する、さらには完走目標時間も5時間以内くらいをターゲットに置く、という気持ちで臨んだものです。

しかし近年の大会においては、完走制限時間の設定が6時間30分~7時間が一般化してきていることもあって、制限時間を目いっぱい使って完走するというランナーが圧倒的多数になってきているのが現状です。

つまり、かつてはフルマラソンにある意味神聖な気持ちをもって臨んでいた参加者の意識が、「楽しく走る」、「仲間とのコミニケーションツールとして走る」、「ダイエットの手法としてランニングする」、などフルマラソンを広義にフランクに捉えて参加するランナーが増えている、という印象が強いのです。これは誤りでも間違いでもなく、フルマラソンがそれだけ身近な存在になってきた、と考えられるのかもしれません。

しかし42.195kmという距離は口で言うほど簡単な距離ではありません。どういうことかというと、5時間、6時間もの時間を連続して運動すると、人間の身体には様々な変化が起こってくるからです。例えば体内エネルギーのこと。人間には走るためのエネルギー源になるグリコーゲンという体内物質があり、これが車でいうガソリン代わりになって運動を支えてくれるのですが、おおむね3~4時間一定運動を続けると、このグリコーゲンが底をついてしまい運動能力がガクンと落ちてしまいます。つまりガス欠状態になる、ということです。

カーボローディングなどといったグリコーゲン貯蔵法もあるのですが、ランニング初心者には難しいので、走っている最中にエネルギーにつながる食物を小刻みに補給しながら走ることをお勧めします。具体的には、エネルギーに代わりやすい糖質系の食べ物や飲み物を携帯するか給水所で補給するということです。よくバナナがエネルギー補給に良い、と言われます。バナナは、消化しやすく、デンプン質が豊富で糖質も含まれているので確かに良い補給物です。そして食べた後エネルギーに代わるまでにおよそ2時間の時間がかかるということを頭に入れておきましょう。どのタイミングがタイムリーなエネルギー補給になるか?を理解して食べることも大切です。

それから誰もが経験する筋肉痛。十分なトレーニングを積み、筋力を備えた、4時間未満のランナーの場合は比較的筋疲労が起こりにくいと言われます。終盤の2~3kmを我慢すればゴールできるでしょう。これに対し、初心者ランナーの場合は、25km、30kmといった距離をコンスタントに経験して本番に臨む人は少ないでしょう。そういうランナーはどうしても本番で未知の領域を経験することになります。概ねハーフ過ぎか25kmあたりから筋肉痛が始まり残りの17~20kmくらいは筋肉痛との格闘になります。

この筋肉痛を少しでも和らげる方法は、「こまめなストレッチング」をレース中に取り入れることです。3時間以上運動を続けていると、筋肉には乳酸という老廃物(疲労の素)が溜り始めます。そうすると筋肉は次第に柔軟性を欠いてきて硬化が始まってきます。筋肉が固まってくると、関節の動きが緩慢になり運動力は著しく低下。これを緩和する方法が「こまめなストレッチング」なのです。ストレッチングは、下半身のほかに体側伸ばしや肩回りも同時におこなうことをお勧めします。これらに要する時間はたかだか30秒~1分、大きなロスにならないのでくれぐれも怠らないようにしましょう。

横浜マラソンでは18ヶ所の給水所が設置されています。水分補給や食べ物補給をおこなうため、一度止まるので、このタイミングを使って屈伸・伸脚を必ずやること。もしウェストポーチなどを腰につけて走れるようなら、この中にアミノ酸系のジェル飲料を入れておくとよいでしょう。アミノ酸は破壊された筋肉繊維を修復する機能を持っているからです。アミノ酸系の飲料はスタート1時間ほど前から飲んでおいた方がよいでしょう。

次はペース配分。スタート直後は大会の雰囲気も盛り上がるので高揚感いっぱいの状態でスタートするでしょう。直後は「群衆の流れ」があるので流れに乗ってスタートするほうが無難ですが、5kmも行くと隊列も多少バラついてきて、自分のペースで走ることができるはずです。5~10kmで自分のペースが速すぎるか遅いのか?体調はどうか?といったことを自身でチェックすると良いでしょう。できるだけ安定したペースで距離を稼いで欲しいものです。例えば次のようなペース計画が考えられます。

0~5km:予定よりやや速めになることを想定する。
5~20km:予定のペースを守ること。
20~37km:続けられたら予定のペースを守ること。一番頑張らなければならない距離。
37~42.195km:そろそろゴールが見えてくるのでここからは「ゴールする!」という強い気持ちで頑張ること。

なかなか予定通りゆかないのがフルマラソンですが、とりあえずは半分(ハーフ)を目標にしていきましょう。途中、給水所での給食や給水、パフォーマンス等を楽しみにしながら走ったほうが、気持ちにゆとりが生まれてくるはずです。「遅すぎるかな?」と思うくらいのペースで走り始めて20kmまではできるだけ消耗を抑える意識をもって走るようにしてください。

後半、筋力が落ち始めペースが保てなくなってきたら、自分と同じくらいのペースで走っているランナーを探すこと。ペースを合わせて走ると再び自分のペースを取り戻すことができるでしょう。本番では是非そんなランナーを探しながら走ってみてください。

フルマラソン完走に向けて大切なことは、
●走りのリズムを崩さないこと(腕ふり)
●平地では歩幅を一定に保つこと
●上り坂は心持ち前傾を深くして歩幅を狭くとり、腕ふりを大きくしてリズムで上がること
●こまめにストレッチングして身体をほぐしながら走ること
●天候、体調、コースの変化など42.195kmを完走するためには走中様々な変化・変動が起こってくることを予め気持ちの中で想定し、どんな変化にもフレキシブルに対応してゆく、という気持ちをもって臨むこと

スポーツの世界ではよく「心・技・体」という言葉が使われますが、長距離走の世界でも全く同じ。体調、体力、環境(天候や状況)を自分のパフォーマンスに取り込みながら、これをマネージメントする強い心をもつことが一番大切なことです。

本番まであと1週間。ここからは疲れを抜くことに専念、走る練習は控えめにして過ごしてください。

 
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